投稿日:2006-11-06 Mon
毎朝見かけるニコニコ顔の爺さんが畑仕事をしている。毎朝、7時半頃工房に行く途中に出会う当たり前の光景だ。その爺さん、背中が丸くて、痩せている。農作業用の比較的汚れた洋服をだらしなくまとい、多分、髪の毛もほとんど残っていないだろう頭には、今の時期には薄汚れた毛糸の帽子がずり落ちそうに乗っている。この毛糸の帽子、夏場には薄汚れたタオルに変わる。
工房に向かう為、車で通り過ぎるのだが、その爺さんが乗っていたと思われる、いや、顎を突き出し右左にフラフラと揺れながら乗っていたところを目撃しているので、爺さんの愛用自転車である。
その、自転車が道の中央辺りに斜めに停めてあるので、皆の通行の邪魔になっている。いつもの事ながら、ゆっくりとブレーキをかけ、自転車すれすれに徐行なければならない。本人は、我関せずと黙々と畑仕事をしている。
年中良く見かける当たり前のこの辺りの情景だ。
多分、畑仕事もなかなか要領よく捗っていないだろうことは容易に想像がつく。
彼のニコニコした顔には、こちらも気分が良くなるのだが、どうも、この笑顔、この爺さんの顔の造作で爺さんの面相のようだ。いつも同じニコニコ顔だからそう思ってしまう。
今朝も会った、そして、こう思った・・・。
彼の人生はまもなく終わる。長くても数年だろう。ある日の農作業中ポックリ死ぬのだろう・・・。毎日朝から夕方まで畑仕事、黙々とひたすら畑仕事。
大原野の広々した田園の中で、毎日毎日農作物の収穫を目標に生きているであろう彼の心の奥には何があるのだろう・・・。
誰かに、誰かに辛く当たったり、誰かを追い越そうと思ったり、悔しがったり・・・そんな感覚は、彼の場合、当の昔に無くなっているように思う。ただ、ひたすら毎日を農作業で時間を過ごし、もしかして、収穫の喜び、満足感さえもないように思われる・・・。
彼のニコニコ顔は、健やかに余生を送らせて頂けるという神仏に対する感謝の気持ちがにじみ出ているのだろうか・・・。
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